ライムスター宇多丸さんと「20 世紀少年 最終章 ぼくらの旗」

ライムスター宇多丸さんと「20 世紀少年 最終章 ぼくらの旗」

TBS ラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」(土曜 21:30 - 24:30 生放送)の 2009 年 8 月 29 日(土)22 時台のコーナー「ザ・シネマハスラー」で、「20 世紀少年 最終章 ぼくらの旗」を取上げていました。

  • パーソナリティ
    • ライムスター宇多丸

宇多丸さんの発言を以下にまとめます(敬称略)。

  • 公開初日に新宿バルト 9 で観た
    • 客層はライト層で、「20 世紀少年」の熱狂的なファンは少なかった
      • 上映後、ポカンとしている人が多かった
      • 最後の数分間の前に帰る人もいた
  • 今回は、鑑賞前に原作を全巻読破した
    • そもそも原作に問題があることを再確認した
    • 映画化は、原作の問題点を解消する絶好の機会だったはず
      • 不要に引延ばされた部分をバッサリ切って、テーマを整理すれば、作品としての完成度を高められた
    • 実際には 3 部作で、原作の良くない部分を何も考えずにそのまま引継いでしまった
      • それでも全 22 巻 + 上下巻は入らないので、中途半端なダイジェストにして断片的な説明で補っている
  • 堤 幸彦監督の絶望的な演出・編集もあり、気が遠くなるほどつまらない映画になってしまった
    • 3 部作共通で、全場面がひどい
      • 一般市民がみんな知っているケンヂの歌をカンナは知らない
      • 逃げていたケンヂが思い直す理由のなさ
      • 前夜 TV 放映の「もう一つの第 2 章」で後出しの伏線を追加したのに、大した伏線ではなかった
      • 殺人ウィルスを積載した飛行物体を街の上空で爆破してしまう
      • 音楽祭でケンヂが「“ともだち”は死にました」と言った直後のカンナが無表情
      • ビリー(高橋 幸宏)が死んだ目をしている
      • 昭和 40 年代に逆戻りしている設定なのに、エキストラで参加している音楽祭の観客が現代の服
  • 第 2 章までは風呂敷を広げる段階
    • 浦沢 直樹作品の最大の美点であり、辛うじて興味が持続する
      • 「お前、あいつか?」という最低レベルの引っ張りだったとしても
    • 最終章では風呂敷を畳まなければならない
      • 大慌てで畳んでいるだけで、畳まない方が良かったくらい
  • 「20 世紀少年」には物語が 2 つあることが、混乱の根本原因
    1. ケンヂのロックを通じた自己実現
    2. “ともだち”を含めた幼馴染みのトラウマ克服
    • 町山 智浩の指摘(→町山 智浩さんと「20 世紀少年 第 2 章 最後の希望」)は 1
    • 浦沢が本当に描きたかったのも 1 だろう
      • 「20 世紀少年」のオープニング・「20 世紀少年」のラスト・「21 世紀少年」のラスト
    • “ともだち”の正体は 2
    • 1 と 2 は確実に違うのに、混同したまま話が進む
      • 原作も映画も結末は 1 と 2 を折衷したものだが、うまく着地していない
    • 1 は、いかにも団塊の世代の親父の繰り言
      • 世界を変える音楽があったら、ファシズムに通じる
      • 世界を変える音楽があっても、マンガはともかく映画では流さなければいけない
      • 観客がその音楽を嫌いだと、気持ち悪く感じる
      • 実際に音を鳴らさないといけないエンターテインメントにおいて、音楽に現実離れした役割を与えるのは無理
    • 2 は、原作と変えたと言うより整理した
      • ヴァーチャルアトラクションはタイムマシンではないのに、何かが救われた雰囲気にしているのは欺瞞
      • ヴァーチャルアトラクションを最後の数分間に持って来るのは、品がなく最悪
      • 「いじめ撲滅」というテーマは良いが、いじめられっ子を特殊視した描き方
      • ケンヂの「俺たちの仲間に入りたかったんだろう」という視点
      • 最後の数分間の“ともだち”は、美少年俳優ではなくガリガリガリクソンにすべき
  • 最終章の CM の巨大ロボット・UFO・殺人ウィルスを見れば、自分の大好きな要素が満載
    • 上述の理由により、第 2 章までに比べて際立って不快
      • 第 2 章までも映画として不細工なのは同じだが、最終章はメッセージが不快
  • 地球防衛軍の隊員(高嶋 政伸)がユキジ(常盤 貴子)に諭されて泣く場面は、高嶋の「こんな下らない映画に出ているんですよ」という偽らざる心情だろう
  • 映画を観て「今年のワースト」と思うことは多いが、下には下があった
    • 2009 年ぶっちぎりのワースト